「問い方」を共有する

AIとの対話は、実は問い方の質が全てを決める。テンプレートとは、その問い方の骨組みである。

テンプレート的思考の本質

判断軸の共有

テンプレートは「何をどう問うか」の軸を固定する。

個人の直感に頼らず、組織全体で同じ基準で判断できるようになる。インターネット以前は「表現」が限られた人に独占されていたように、今は「問い方」が組織の競争力の源泉である。

一貫性の維持

繰り返し使うことで、思考の一貫性が生まれる。

テンプレートは単なるフォーマットではなく、その組織の「ものの考え方」を体現する。使い続けることで、個人レベルでもチームレベルでも、考える癖が変わっていく。

暗黙知の形式知化

優れた判断者の「問い方」を構造化する。

リーダーや経験者の判断プロセスを「テンプレート」という形で定着させることで、組織全体の力が均される。これはスキル伝承ではなく、思考フレームの共有である。

テンプレートの構造例

分析・判断創造・提案論理構築戦略立案学習支援

分析・判断を深める構造

【背景・問題の定義】 - 何が問題なのか（現状認識） - なぜ問題なのか（影響の把握） - 制約・前提は何か（境界線を引く）【分析の切り口】 - どの視点から見るか（複数の角度を指定） - 何と比較するか（比較基準の設定） - どの期間・規模を対象とするか（スコープの明確化）【判断基準】 - 成功・失敗の定義は何か - 優先順位の軸は何か - トレードオフをどう考えるか【期待される産出】 - 結論の形式（箇条書き / 図表 / ナレーティブ） - 根拠の明示方法 - 不確実性・限界の記述方法

複雑な事象を整理する際、「何を」「どう見るか」の枠組みを先に決めておくと、同じデータから導き出される結論の品質と一貫性が劇的に上がる。これは「分析スキル」ではなく、「問い方の質」の差である。

創造・提案を導く構造

【制約条件（重要）】 - 誰に対して何を実現するのか（受け手と価値） - 何は避けるべきか（禁止事項・トーン） - どの程度の「新奇性」を求めるのか【参考・参照すべき要素】 - 類似事例で参考になるもの - 避けるべき過去の失敗例 - 文化・業界の慣習で守るべきもの【評価軸】 - 実行可能性をどの程度重視するか - 革新性と安全性のバランスは - 対象者にとって本当に価値があるか、の確認方法【産出形式】 - アイデアの具体度（スケッチか / 実装案か / コンセプトか） - 代替案の数 - 各案の理由・背景の説明方法

「自由に作れ」では創造は起きない。むしろ強い制約があるほど、その中での創意工夫が生まれる。テンプレートの役目は「何をしてはいけないか」を先に決めることで、「何をすべきか」を浮き彫りにすることである。

論理構築・論証の構造

【命題・主張の明確化】 - 自分は何を主張しているのか（一文で述べよ） - その根拠となる前提は何か（何を自明としているか） - 相手が異論を唱える可能性はどこか【証拠・事例の収集】 - どんな証拠があれば説得力があるか - 反例・対抗主張にどう答えるか - 引用元の信頼性をどう評価するか【論理の骨子】 - A→B→C の連鎖に、飛躍がないか - 「偶然」と「因果」を区別できているか - 例外や限界をどう扱うか【表現方法】 - 図表 / 数字 / ナレーティブのどれで示すか - 一般人・専門家のどちらに向けた説明か - 確実性の度合い（「確実に」か「可能性がある」か）をどう示すか

論証の力は「何を言ったか」より「どう言ったか」に左右される。テンプレートで「どの順序で」「どの粒度で」「どの形式で」示すかを決めておくと、受け手の納得度が変わる。

戦略・方針立案の構造

【現状把握】 - 外部環境（市場・競争・規制・技術動向） - 内部資源（人・金・技術・ブランド） - 自社の得意・不得意（相対的強み）【戦略的問い】 - 3年後に「何になっていたい」のか（ビジョン） - そこに到達するために「何を優先するか」（取捨選択） - 競争相手との差別化軸は何か【実行可能性の検証】 - 実現に必要なリソースは足りているか - 時系列で何から始めるべきか - 失敗時の撤退ラインはどこか【組織への伝達】 - 「なぜこれなのか」を全員が理解する説明 - 各人の役割と評価基準をどう定めるか - 進捗をどの指標で測るか

戦略とは「やること」ではなく「やらないこと」を決めることである。テンプレートは、その意思決定プロセスを後続の世代・組織に伝承する仕組みとして機能する。

学習・育成を設計する構造

【学習者理解】 - 学習者の現在地は何か（何ができて何ができないか） - なぜこれを学ぶ必要があるのか（学習動機） - どのくらいの時間・リソースをかけられるか【学習目標の構造化】 - 「わかる」から「できる」へのステップは何か - 評価方法は（テスト / 実践 / ピアレビュー） - 達成のハードルをどこに置くか【学習プロセスの設計】 - 理論と実践のバランス - つまずきやすい箇所への対応 - 学習者同士の相互学習をどう促すか【フィードバックと改善】 - 進捗をどの粒度で確認するか - 失敗から何を学ばせるか - 習熟度に応じた支援の差別化

教育は「教える」ことではなく「学ぶ状態を作る」ことである。テンプレートを使うことで、その学習設計の再現性と品質が高まる。

テンプレート活用による組織の変化

観点	テンプレートなし（属人化）	テンプレート活用
判断の質	人・タイミングで大きくばらつく	基準が定まり、再現性が出る
引き継ぎ	「センス」や「勘」の伝承が困難	思考フレームが形式知化され、伝わりやすい
チーム連携	各自の「正解」の定義が異なる	同じ基準で問い、同じ基準で評価できる
新人教育	実務を通じた時間がかかる	テンプレートから「考え方」を学べる
改善	個人の試行錯誤に埋もれる	テンプレート単位での最適化・共有が可能

組織の「問い方」を
整える

テンプレートを通じて、判断の軸と思考の一貫性を組織全体に広げる

テンプレート構築・相談